認知行動療法教育研究会
        

〇「こころのスキルアップ教育の開発」

当研究会では、認知行動療法のエッセンスを活かした計11時間分(45分×11コマ)の授業案を作成し、「こころのスキルアップ教育」と名づけました。
ここでは、私たちが考案した「こころのスキルアップ教育」について、背景や具体的な内容についてご紹介していきたいと思います。

○ 認知行動療法のエッセンスを教育に

認知行動療法の詳しい内容については、「認知行動療法とは」のページを参照して頂けたらと思いますが、ここで大野裕先生(認知行動療法研修開発センター理事長)の記事を引用させていただきます。大野先生は次のように説明しています。

(以下引用) 認知療法の『認知』というものはものの受け取り方や考え方といった意味で、認知療法ではストレスを感じたときにそのときの受け取り方や考え方を振り返り、もう一度客観的に現実を見つめ直すことで、気持ちを軽くしたり、問題に対処する力を発揮したりするための手助けをするのです。

 そして、この方法をいったん身につけると、患者さんはうつ病などの精神疾患にかかりにくくなります。・・・また認知療法は、大人だけでなく、子どもや思春期の人の落ち込みや怒り、不安などの気持ちのコントロールに役立ちますし、ひいてはほかの人の気持ちを思いやることもできるようになってきます。 (引用終わり)

私たちは、何か問題を抱えて落ち込むと、気分に振り回されて混乱し、解決の道を見つけることが難しくなります。こんなときに「私たちの気持ちや行動は、そのときに頭に浮かんだ『考え』によって影響される」という認知行動療法の基本(エッセンス)が理解できれば、そのときの自分を客観的にとらえることができ、考えを見直すことができるようになります。この方法を子どもたちが治療の場ではなく、授業を通して学び、身につけてほしいと考えます。

私たちは学校において認知行動療法をそのまま実施しようとしているのではありません。認知行動療法のエッセンスを取り入れた授業案を「こころのスキルアップ教育」と名づけ、学校で学級担任が授業の中で教えることを前提にしています。だから、認知行動療法を知らなくても教えることのできる授業案なのです。

ポイントは右のモデル図のように、ある「できごと」があって「気分が落ち込んだ」のではなく、その気分は「そのときに浮かんだ考え」によって起きたのだ、ということを理解してもらうことです。私たちは「ものは考えよう」と言って、いろいろな受け止め方に気づくことで気分を楽にしていますよね。認知行動療法の基本とは、こころが元気なときならば誰でもやっていることなのです。
「こころのスキルアップ教育」を通して伸ばしたいスキルは次のようになります。

① しなやかな考え方ができるようになる
② 自己理解・他者理解ができるようになる
③ 感情のコントロールができるようになる
④ 問題解決の能力が高まる

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